店の奥に備え付けられた小さなテーブル。


「何でこんな時間にいたの?」

美味しそうなパンを目の前に、再度訊かれた。


何でって言われても・・・


「昨日、家に帰ってないの?」

ああ、そこ。

「まあ」


「外泊なんて、感心しないなあ」

分かっている。

いいことをしているとは思っていない。


なんだか段々悲しい気分になってきた。

きっと、先生は私を軽蔑している。

外泊するような不良だと思われている。



「食べ方が、綺麗だね」

「はあ?」

思わず声に出た。


確かに、父さんも母さんもマナーにはうるさかったから。

「人が不快になるようなことはダメよ」って育てられた。


「愛情を持ってきちんと育てられた証拠だよ」

ポツンと言われた言葉。


「そんなことありません。私はいらない子だから」

つい言い返してしまった。


不思議そうな顔をする先生。


「色んな事情や、思いもあるだろうけれど、自分を大事にしなさい。そうしないと、きっと後悔するときがくるから」

事情を聞こうとはせずに、説教された。



私も先生もパンを平らげ、先生の支払いで店を出る。