優しくて、厳しくて、頼れる存在。
いつまでたっても、大樹はいい兄さんだ。

「おい、どうした?」
考え事をしていた私は、廊下で渚にぶつかりそうになった。
「ああ、ごめん」

チラチラと周りに人がいないことを確認して、

「今、帰り?」
「もう少しで終わる。お前、今日は当直だよな」
「うん」

昨夜、梨華が泊まっことはすでに知らせてある。

「妹、大丈夫なのか?」
うーん。
大丈夫と訊かれると・・・
「ああいう子だから」
そんな返事しか出来なかった。

よく考えると、渚と梨華はどこか似ているのかも知れない。
もちろん、渚は几帳面で、いい加減なことが出来ない性格だし、梨華のようにフラフラしたところはない。
けれど、自分に正直で周りに左右されないところはとても似ている。