私も渚も、結婚式なんてしなくてもいいと思っていた。
すでにおなかも大きくなっているし、体調を考えてもそれどころではない。
赤ちゃんが無事に生まれて、落ち着いたころその気になれば写真だけ撮りたいと母さんにお願いした。
しかし、
「娘の結婚式もできないなんて絶対に嫌よ。ささやかでも結婚式をして、みんなに祝ってもらわないとダメよ」
って言い張られた。
まだ母さん1人なら説得できたかもしれないけれど・・・
みのりさんまでが、
「結婚式はしましょう。私には娘がいないから、樹里亜さんの花嫁姿が見たいわあ」
なんて言い出した。
結局、両家の両親と兄弟、親しい友人達だけを呼んでささやかなパーティーを開くことにした。

場所は大樹の友人の営むレストラン。
色々と気を遣ってもらい、沖縄の食材をふんだんに使ったコース料理が用意された。
私も真っ白なドレスを着せてもらい、タキシード姿の渚と並んだ。
梨華と桃子さんの手配で、会場は綺麗な花々で飾られている。
かわいらしいドレスを着せてもらった結衣ちゃんは、フラワーガールを務めてくれた。
父さんと母さん、みのりさんと沖縄のお父さん、母さんのテーブルの上にジュリアさんも写真も飾られた。

何も儀式的なことはなく、神父さんもいないパーティー。
このまま食事をして終わるんだろうと思っていると、
「すみません。ここで新郎新婦から一言あります」
大樹がいきなり言い、渚が立ち上がった。
ええ?
驚いていると、
「樹里亜」
立ってと、目配せされた。

2人並んで立ち会場を見ていると、渚が話し始めた。

『お忙しい中集まってくださった皆様、本当にありがとうございます。
私達は今日ここに夫婦として歩んでいくことを決めました。
今まで、産み、育て、支えて頂いた皆様のご恩を忘れることなく、謙虚に、誠実に生きていきます。私高橋渚は、皆さんに約束します。
どんなときも樹里亜を愛し続けます。
いつも子供と樹里亜の側にいて、守っていきます。
たとえ夕食にインスタントラーメンが出ても、文句を言いません。
でも、時々にしてください』
そこまで言って、チラッと私を見た。

ええ、私にも言えって・・・しかたない。

『えっと、私竹浦樹里亜は、いつまでも高橋渚さんを愛し続けます。
どんなことがあっても信じて着いていきます。
多少潔癖でも、食事にうるさくても、決して逃がしません』
もう一度渚を見る。

『以上、皆様の前で誓い夫婦となります。どうかこれからも私達家族をよろしくお願いいたします』

場内は大きな拍手に包まれた。
母さんも父さんも泣いていた。