「お前の1度言い出したら聞かない所はジュリアさんそっくりだ」
「父さん・・・」
驚いて、顔を上げた。
初めて、父さんからジュリアさんの話を聞いた。
私を産んだ人の話なんて、1度もしてくれなかったのに。

「どんな人だったの?」
今の父さんになら聞けそうな気がする。

「そうだなあ・・・真っ直ぐで、正義感で、弱いものの味方だったな。病院に迷い込んでくるホームレスに勝手に治療して、よく怒られていた」
「へえー」
いい人だったのね。

「樹里亜、今まで育ててもらった恩を少しでも感じるなら、それを渚君のご両親へ返しなさい。そうすればきっと上手くいくからな」
「うん。父さん、こんなわがままな娘でごめんなさい。そして、育ててくれてありがとう」
珍しく、素直に口を出た。

「バカ、樹里亜はいい子だよ。自慢の娘だ。幸せになりなさい」
「はい」
返事をしながら、父さんと母さんのような親になるんだと心に誓った。