「ねえ、どうしてそんなに家を出たいの?」
私が聞くのも変だけれど、ここまで執着する理由を聞きたい。

「アメリカに行きたいの」
「はあ?」
今度こそあきれ返ってしまった。
「お金は?仕事はどうするの?」
「そんなもの、行ってから考えるわ。とりあえずの準備資金を貸してもらったら、後は向こうへ行って仕事を探す気よ」
「バカじゃないの?世間をなめすぎ」
やっぱりこの子は本当のバカかもしれない。
「そうかなあ」
と、梨華は持ってきたカバンから着替えを取り出す。
やはり泊まっていく気みたい。

「泊めるなんて言ってないわよ」
無駄と知りつつ、一応言ってみた。
「バラしてもいいの?」
ううっ。
「そんなこと言うと、2度とお小遣いあげないから」
「それは、ダメ。もう、お姉ちゃん意地悪言わないでよ」
かわいい妹の顔になる。

「今夜だけ泊めるから。明日病院に行ったら大樹に話すからね。それまでにどうするか考えなさい」

これが私にとっての最大限の譲歩。
梨華の家出に手を貸したなんて知れたら、大変な事になる。
私にとばっちりが来ても困るのよ。