「あの・・・」
山口さんがリビングから出てきた。

そして、梨華と目が合って、

「お前・・・」
「先生」
二人は黙り込んだ。

んん?
どういうこと?

「知り合いなの?」
母さんが梨華に尋ねた。
「う、うん」
梨華にしては歯切れの悪い返事。

「妹をご存じなんですか?」
私は山口さんい尋ねてみた。

「ええ、彼女が高校時代に教えていました。担任は持っていませんでしたが、生徒指導をしていて何度も顔を合わせていたんです」
生徒指導ねえ。
梨華の渋い顔も納得できる。

「まあ、とにかく部屋にどうぞ。梨華も来なさい」
母さんに言われ、
後ろの方で、梨華が「えー」と言っているのが聞こえた。


「なんだか聞き覚えのある声がしたので、つい出て行ってしまいました。すみません」
「いえ、こちらこそお見苦しいところを」
母さんと山口さんが大人の会話をしている。

梨華は仏頂面。
すぐにでもここから逃げ出したそう。
それなのに、山口さんは梨華の方に視線を向けた。
「ところで、竹浦は朝帰りなの?」
「えっ」
梨華の表情が固まった。

「無断外泊ってこと?」
「それは・・・」
何々、梨華がおかしい。

「お前高校卒業するときに約束したよなぁ。大学に行って真面目になります。もう2度と心配をかけるようなことはしません。あとなんだっけ?」
「もー、やめてください」
梨華が必死に止める。

母さんも、私もあっけにとられ、
梨華は顔を真っ赤にして口ごもり、
山口さんはジーッと梨華を見ている。