「お姉ちゃんらしくない部屋ね」
「そう?」
シンプルで物が少なくて、私の好みだと思うけれど。

「で、ここに住んでる彼はいくつなの?」
「・・・」
驚いて、絶句してしまった。

無言のまま、「何でそう思うのよ?」って目で訴えた。

「だって、歯ブラシ」
そう言うと、浴室の方を指さす梨華。
ああ、忘れてた。

「一体、どんな人なの?お姉ちゃんが同棲しようと思うくらいだからいい男なんでしょうね」
興味津々に聞いてくる。
うー、一番知られてはいけない人に見つかった気がする。

「あんたに関係ないでしょう。大体、こういうときは見ない振りするものよ」
梨華を睨み付けた。

へへへ。
私の抗議など気にする様子もなく、
「私もお姉ちゃんみたいに、一人暮らしがしたいなぁ」
意味ありげな視線を向けてくる。


梨華は4つ年下の妹。
甘えん坊で、わがままで、とっても個性的な子。
私が家を出たときはまだ中学生だったけれど、その頃から自由奔放だった。
学校も休みがちで、夜遅くまで帰ってこなくて両親を心配させる事も珍しくなかった。
でも、憎めないのよね。
小さい頃から、よく私をかばってくれたし。

周りは、医学部に行き医者になった私や大樹をできた子で梨華を不出来な子なて言うけれど、決してそんなことはないと思う。
梨華の気持ちの強さに、私はあこがれていた。
誰が何て言おうと、自分の価値観しか信じない梨華。
こんな風に生きられたらどんなに幸せだろうと、私はいつも羨ましかった。