夜、父さんと大樹が一緒に帰ってきた。
玄関から真っ直ぐ、私の部屋の前まで近づく足音。

トントン。
「ちょっと来なさい」
父さんの声。

私はリビングに向かった。


すでに、家族がみんな揃っている。

「樹里亜」
重苦しい空気が漂う中、父さんが口を開いた。
「はい」
「一体、どれだけ心配したと思ってるんだっ」
父さんが怒っている。
普段から厳しい人ではあるけれど、今日は特別に機嫌が悪い。

「心配かけて、ごめんなさい」
そう言うしかない。

「お前を信用して１人暮らしをさせたのが間違いだった。もう２度と家から出るな」
怒りを隠せない父さん。

でも、二度と家から出るななんて無茶苦茶なと思っていると、

「そんなの無理よ。家から出ずに暮らせるわけがないでしょう」
小馬鹿にしたように梨華が口を挟む。

その時、
バンッ。
父さんがテーブルを叩いた。

「やかましいっ。お前は外に出て働け」
梨華に向かって怒鳴る。

「はあ？なんで私なのよ。今はお姉ちゃんの話でしょ？八つ当たりしないでよ」
それを聞いて、父さんの表情がドンドン険しくなっていく。

まずいなって思った直後、
パンッ。
立ち上がった父さんが梨華の頭をはたいた。

嘘。

「何でよっ。何で私なのよっ｣
「生意気なことを言うからだ！」
「はあー、意味が分からない。父さんもお姉ちゃんの大っ嫌い」
そう叫んで出て行った。