久しぶりに帰った実家。
無言のまま荷物を運ぶ大樹。

玄関を開けると、
「お帰り」
梨華が顔を出した。

「あんた、仕事は?」
平日の昼間に自宅にいる梨華に、思わず言ってしまう。
「どの口が言うかなあ」
嫌みっぽく言われ、私は黙った。
確かに、今の私は梨華に説教できる立場ではない。

「いいから上がりなさい」
母さんも顔を覗かせる。

私は玄関を上がり、母さんに抱きついた。
「ごめんなさい」
「いいのよ。無事でよかった」
母さんも涙声になっている。

「お帰りなさい」
お手伝いの雪さんも笑顔で迎えてくれた。


リビングへとはいると、そこはいつものままだった。
何も変わっていない。

「じゃあ、俺仕事に戻るから」
と、荷物を運び終えた大樹。

ああ、忙しいのに私のために迎えに来てくれたんだ。
そう思うと申し訳ない気持ちで一杯になる。

「樹里亜、マンションの荷物は納戸にしまってあるから」
えええ?
納戸って、
「マンションは引き払ったのよ」
母さんが教えてくれた。

そんな、引き払ったって・・・
「私のマンションなのよ。何で勝手に
あそこには渚との思い出が詰まっていた。
私にとって大切な場所だったのに・・・
急に涙がこぼれてきた。

「仕方ないでしょう?」
梨華の冷たい言葉。

私はボロボロと泣いた。

でも、
「あなたが悪いのよ」
と母さんに言われ、何も言い返せなかった。

娘が妊娠して家出したとなれば、親として実家に連れて帰るのは当然。
住んでいたマンションを引き払われても仕方がない。
でも、でも・・・やはり悲しい。