何だ、そのマニアックな条件は。
そんな条件に合う人など、簡単に見つかるのだろうか。その割に焦った様子のない彼の表情は、どこか楽しそうで。
見つめ合っているうちに、はたと気付いてしまった。


「それって、もしかして、わたしのこと?!」

「他に誰がいるの」


当たり前のようにそんなことを言う。
そもそも、何故私が傷心中だと知っているのか。彼の発言に目を丸くしていると、種明かしを教えてくれた。


「実はショーの前の休憩時間に、別のフロアで君を見かけたんだ。今にも泣き出しそうな顔して歩いてたから気になっちゃって。
どうにか笑顔にしてあげたいなって思っていたら、偶然会場を通りかかってくれた」


揺れる瞳が、優しい色をしている。


「ひとりよがりだって分かっているけど、さっきより随分いい顔してる」


こんなに至近距離で見つめられるのは、このうえなく恥ずかしい。私は慌てて目を伏せた。


「こっ……心が優しいという部分は、事実と異なります。さっきの、子どもたちの方が私よりずっと……!」


頭に浮かんだのは、ショーを見ていた子どもたちの笑顔。何の損得勘定もない、まっすぐな眼差し。


ーー裏のない純粋な表情が羨ましくなったのは、どうしてだろう。