言われた言葉の意味を私が理解するまで、たっぷり一分はかかったかもしれない。思ったよりもはるかに大きな声が出た。
「えっ、もしかしてウサギさん?!」
シーッと口元に人差し指を当てて、元ウサギさんは小さな声で言った。
「ナイショだよ」
今更遅いが慌てて両手で口を塞ぐ。小さなお友だちに知り合いはいないけれど、私は思いっきり首を縦に振った。夢を壊してはいけない。
「あとさ、ナイショついでにもうひとつ」
「は、はい」
彼は内緒話をするように体を丸めて私に目線を合わせてきた。日だまりのような暖かで丸い瞳が不安気な私を映し出す。自然と縮まった距離に、胸の奥がどくりと音を立てた。
「今、アシスタント募集中なんだよね。出来れば心の優しい子」
「そうなんですね……」
何故このタイミングでアシスタント募集の話なのだろう。全く先の読めない内緒話に混乱しつつ、当たり障りのない相づちを打つ。
彼はにこにこ笑ったまま、私の顔を覗き込んできた。
「例えば、初対面のウサギの言うことも素直に聞いてくれる、傷心中の子なんてピッタリなんだけどな」
「へえ……」