ドラマや漫画などでよく聞く言葉は、「誰かのため」。自分を応援してくれる人や家族のためなら、どんなに辛いことでも頑張れる。実際に私もそうなのだろうとずっと思ってきた。


だけどいつからか、その歯車が狂い始めた気がする。

家族のために、自分を応援してくれる人のために頑張ろうと思っていたのに、どんどん自分がわからなくなってきて。私はどこに向かっているのか、何を目標にすればいいのか、それすらも見失い始めていた。

そんな私に、彼は「自分のため」と言い放ったのだ。




「人間っていうのはどんなにいい奴だとしても、結局は自分のために頑張ってるんだよ。誰かのため、なんてそんなものは後付けだ。そう言っておけば周りからも良く思われるから、結果的にはそれも自分のためになってると俺は思うけどな」

「……」

「お前が何に悩んでるかは知らねぇけど、別に誰かのために頑張る必要なんてないだろ。お前の人生は、お前のものだ。自分のために生きても罰なんて当たらねぇよ」

「……そうだね」




そんな簡単なものではない。

私はあの子のために頑張らなければいけないし、ここで私が逃げ出すわけにもいかない。