「芹那は?そういう相手いないの?」
「いるわけないでしょ。いたらとっくに報告してるわよ。今は仕事を覚えるのに必死だし、恋愛に現を抜かす余裕もないわ」
「そっか。でも芹那はモテるだろうね」
私はそう言って、目の前の芹那を観察した。
芹那は美人だ。色白で少し切れ長の目が涼しげな印象を与え、ちょっぴりミステリアスな雰囲気がある。黒くて少しウェーブのかかった髪は艶やかで美しい。身長は平均よりも高い169センチで、手足も長い。
しっかり者で、でも抜けてるところもあって可愛いし、料理も上手だし彼女にして申し分はないだろう。まあ、デキる女に見えるからこそ、高嶺の花に扱われてしまうのかもしれないけど。
「例え私がモテるとしても、夏鈴には負けるわ」
「それはないでしょ。芸能界に入っちゃったら、私なんてちっぽけだよ」
確かに学生時代はそれなりにモテていたと思う。告白されたことも、彼氏がいたこともある。それは芹那も同じだけど。
でも、芸能界に入った今、私よりも綺麗な人なんて数えきれないほどいるし、私が今までいた世界がいかに小さなものだったのかを思い知った。
