ふと浮かんだ一人の顔。それを確認するために、私は駆け足でリビングに向かった。
「芹那⁉」
リビングに入るなりそう名前を呼ぶと、「はーい」という呑気な返事が返ってきた。
そして、なぜか千秋と一緒にキッチンに立っていた彼女は、私にいつもの笑顔を向けてくれた。
「おかえり、夏鈴」
「ただいま。って、そうじゃなくて!どうして芹那がいるの?当たり前のように千秋と並んでるけど、え、まさか二人ってそういう関係だったの?」
思わず顔を青くする私に、「姉貴、勝手に突っ走ってんじゃねぇよ」と千秋が呆れたように言う。そんな千秋に芹那も頷いた。
「夏鈴の考えているようなことはないから安心して。さすがに親友の弟には手を出さないわよ。それに、千秋くんのことは小さい頃から知ってるんだから、そんな気も起こらないわ」
「そ、そうだよね……。よかった」
「今日は仕事が早く終わったから寄ってみたの。そしたら、千秋くんに夏鈴が早く帰ってくると思うって教えてもらったから、こうして待ってたってわけ。最近、あまり会えてなかったでしょ?」
「せ、芹那ぁ」
