「大人気バンドの新曲ミュージックビデオ、しかも初の女優起用。きっとかなりの話題になるわ。かりんなら、先方が求める以上のものを形にできると信じてる。引き受けていいわね?」
「はい。お願いします」
社長の言葉にしっかりと頷くと、「完成を楽しみにしてるわ」と社長は綺麗に笑った。
◇◇◇
umiereさんとの顔合わせは三日後に決まった。その時に撮影の内容などについて教えてもらえるらしい。
一体どんな人たちなのか、どんな仕事ができるのか、考えるだけでワクワクした。この日までにいろいろ調べておかないと。
「じゃあかりん、今日はお疲れ様。明日は朝からCM撮影だから、きちんと整えておいてね。八時に迎えに来るわ」
「了解。明日もよろしくね、菜々ちゃん」
あれから特に仕事もなかった私は、事務所に届いていたファンレターやプレゼントを受け取って、菜々ちゃんに家まで送ってもらった。
もう夕方、千秋も学校から帰って来ている頃だろう。夜ご飯は何にしようかな……。
「ただいまぁ」
玄関で靴を脱ぐために足元を見ると、そこには千秋のローファーが一足と、女性もののパンプスが一足。だけど、これは私のものではない。
もしかして……。
