「わざわざこんなところに入って?」
「ひとりになりたい気分だっただけ」
「なんでだよ」
……なんだろう、この人。口が悪いし、てっきり人に興味がないタイプだと思っていたのに、グイグイ私の事情に首を突っ込んでくる。初対面だし、私のことなんて放っておいてくれたらいいのに。
それでも、この人はきっと――私のことを知らない。
「考えたかったの」
「何を」
「自分が、なんのために頑張ればいいのか」
私の言葉が重すぎたのか、目の前の男は少し驚いているように見えた。
「人って、なんのために生きてると思う?」
真っ暗な夜空を見上げながら、私は彼にそう尋ねた。
初対面の相手にこんな重い質問をするなんて、どうかしている。彼は答えないかもしれない。
それでも、なぜか彼の答えを期待している私がいた。
「……そんなの、自分のためだろ」
少しの沈黙を挟んで、彼はそう言った。
その答えは私の予想の斜め上をいっていた。
「自分の、ため?」