私がニコニコ笑いながらお礼を言うと、千秋は口元の右側を少し上げながらそっぽを向いた。これが彼の照れた時に出る癖だということはわかっているから、これ以上何も言わないでおく。

さっき私にブツブツ文句を言っていた千秋だけど、最初から私の分の夕飯も用意してくれていた。今日のメニューは煮込みハンバーグだ。



桜木千秋(さくらぎちあき)。私の弟は現在高校2年生で、こう見えて都内で一番の進学校に通っている。

お年頃なのか、いつの間にか口は悪くなってしまったけど、黒髪だし真面目に学校に通っているし、成績も学年でトップ5をキープしている、私の可愛い弟。6歳離れているから余計に可愛く思えるのかもしれない。

身長は180センチ程あって、身内の贔屓目がなくてもイケメンだから、きっと学校では大層モテているのだろう。寂しい。




「姉貴、明日は……」

「なんと!午後からなの。だから明日は朝ご飯、私が作るね。お弁当も私が作ってあげるから」

「……別に、買うからいい」

「なぁに言ってるの、それくらいさせてよね。それとも何、千秋はお姉ちゃんが作る愛姉弁当が食べられないとでも?」

「そんなこと言ってねぇだろ」