「どれくらいかかる?」
「道の状態にもよるけど二十分はかかるわ。寝てていいわよ」
「わかった。おやすみ」
菜々ちゃんの言葉に甘えて私は目を瞑る。最近バタバタしていてゆっくり休めていなかった私は、あっという間に眠りについた。
なんとなくわかった人もいると思うが、私の職業は女優だ。自分とは違う人生を生きる仕事。
だから、制服を着る学生でなければ、大聖さんと恋仲であるなんてあり得ないことだ。
私たちが撮影しているのは、現在放送中のドラマ。もう七回まで放送を終えていて、撮影も佳境に入った。
ドラマの内容は、私が演じる主人公の女子高生が、大聖さん演じる御曹司で少し俺様なクラスメイトに惹かれるというもの。だけど、御曹司の彼とは身分が違い、それが私たちに様々な障壁をもたらすけど、なんとか乗り越えていくという王道のラブストーリーだ。
私は今年二十三歳、大聖さんは二十五歳で、そんな私たちが高校生役をするのはどうかと思ったけど、ドラマの視聴率は高くて評判もかなり良いのだとか。
制服姿がキツイ、という意見があまり目立たなくて、そのことに私と大聖さんは安堵している。
