「はい、カット!」




その言葉を聞いて私たちは離れる。視線の先で、「よかったよー!」と笑顔で手を振っている人がいた。

その人に私たちが近づくと、上機嫌で言った。




「いやぁ、二人とも良かったよ!つい引き込まれちゃったし、本当の恋人同士なんじゃないかと疑ったくらいだ」

「……ありがとうございます」

「二人のおかげで撮影は順調だよ。今日はここまで、ゆっくり休んでくれ」

「はい。お疲れ様でした」




二人で頭を下げればその人は満足そうに笑って、周りにいる人たちにも「はい、今日は終わるよー」と話しに行ってしまった。

その様子を見てから隣にいる彼に視線を向けると、彼もちょうどこちらを見ていたらしい。視線が交わって、思わず二人で笑った。




「大聖さん、お疲れ様でした。今日は大丈夫でしたか?」

「お疲れ、かりん。大丈夫、っていうよりすごかった。かりんの泣き顔を見て、本気で胸が苦しくなったくらいだからな」

「ふふっ、私も本当に大聖さんが私のことを好きなんじゃないかって誤解しそうでした」

「それなら今日は俺の勝ちかもな」




二人でまた笑う。

すると、お互いを呼ぶ声が聞こえてきたから、私は彼に頭を下げた。