「良かった…また会えた」
僕が昨日と同じ時間に公園に行くと、あなたは、全く同じ格好で同じ場所にいた。
あなたは本当に嬉しそうに、僕に気づいてそう呟いてくれて、僕はすごく嬉しくなった。
「っ、こんにちは」
「ふふ。こんにちは」
あなたは優しくて微笑んでくれて、抱きしめられた時みたいにドキッとした。
僕達は、昨日話していたベンチに座って、しばらく沈黙が続いたけど、ふとあなたが口を開いた。
「あのね、今日、君に聞きたいことがあってまた来たの。…いいかな」
ぽつんと放たれた言葉は、明らかに昨日と違っていた。
この世界が夢だって気づいている状態で今ここにいる。
…夢に関して、かな。聞きたいことって。
何だか、怖くなった。僕がいる意味って、それを聞いたらなくなっちゃうんだろうか。あなたにとって、それが聞けるなら「僕」である必要があったのか。
僕は、もう一度あなたに会いたかったのに。
裏切られた気持ちになって、折角会いたい人に会えたのに、気分が晴れなかった。
「は、い」
うわ、声、裏返った…最悪。
「ありがとうね。」
そんなの気にしないみたいに、あなたは言う。
「あのね…私、君に」
あなたの声が止まる。
どうしたんだろう。ちらっとあなたの方をむくと、少し震えていた。なにかに怖がる子供みたいに、か弱く見えて、咄嗟に僕は叫んだ。
「あの…!ぼっ僕大丈夫なので…ゆっくりで大丈夫です!」
なんだかもう頭が真っ白で、でも何とかしてあなたに落ち着いて、安心してもらいたくて、それでいっぱいだった。
あなたはきょとんとした様子だったけど、急にぼろぼろと大粒の涙を流して泣き出し…
て、え!?なっ何で、えっ、泣いてる?僕が泣かせた??
「ぅあ、ごっごめ…」
慌てて謝ろうとする僕の言葉を遮るように、あなたは言った。
「ごめんね…私、君が大好きなの。」


…ぇ
「ッッ!!!!!???」
思いがけない言葉に僕は座っていたベンチから転げ落ちそうになった。
「えっ、だ、大丈夫!?」
さっき叫んだ時より頭が真っ白で、思考も回らなくて…心配してくださっている言葉もよく聞こえなかった。
けど、その前にあなたが言った言葉は、真っ白な頭の中でずっと反響している。

‘大好き ’

どうなってるんだろう
僕、あなたに会いたくて、会いたすぎてとうとうおかしくなったのかな…
「ごめんね、変な事言って…大丈夫?」
そう言って中腰になり手を差し伸べてくれるあなたを見て、我に返る。やっぱり、さっきのは現実なんだって、その手に触れながらそう思った。
お互いもう一度座り直して、またあなたが言葉を紡ぐ。
「昨日、ここで会って、君に私を見つけてもらってから、ずっと君のことが忘れられなかったの。多分私は…君に、依存、しちゃったんだと思う。」
ぽつぽつと話すあなたの言葉をひとつも漏らすまいと聞いていると、なんだか少し恥ずかしくなってきた。
「君は、私の夢の存在って分かってるのに、どうしても、君がいないと…ダメなの。」
「……」
「…ごめんね。変な事言って。そうだよね。ちゃんと忘れないと、だよね」
僕が黙ってると、あなたは、そんな風に言って、ベンチを立って去ろうとした。
「待っ…!」
昨日みたいに急にいなくならないで欲しい。言いたいことだけ行って、いなくならないで…
そんな気持ちで、あなたの袖を掴んだ。
「……」
いつの間にか涙ぐんでいるあなたの顔を見て、僕と同じなんだって気づいた。
お互い、必要としあっている。それが嬉しかった。
その気持ちを伝えたくて、でも僕は口下手だから上手くできるか分からなくて…気づいたら、あなたに抱きついていた。
昨日とは反対に、僕から。
そっか、こうすればいいんだ。僕が感じた温かさとか、いっぱい、あなたにも感じて欲しい。
何も言わなくてもいい。きっと、それでいい。
「…ありがとう」
あなたは、またぽつんと呟いた。でもそれは、さっきとは全然違う、優しい言葉だった。
「明日も、来て…くれますか」
「うん、もちろん。会いに行くよ」
そう言って、あなたは僕に、手を回して、ぎゅっと、昨日みたいに抱きしめてくれた。