ボロボロの家、ろくでもない親、酷い家庭環境の中で、私は育った。
だから16になった今でも、愛が何なのか未だに分からない。
そんな私にも唯一のお友達ができた。
でも、その友達には私の家庭のことは話していない学校も違うし、家も遠い。だから私を隠せてお友達になれた。
今日はその友達の家に遊びに行くことになっている。彼女の家は大きくてとても綺麗な一戸建てで、私は中に入るのがすごく楽しみだった。
ちょっとおめかしをして、インターホンを押そうとする、すると窓を挟んで誰かと目が合った。
きっと友達の弟くん、前に聞いたことがある。生意気な弟がいるんだって。
でも、いざ目の前にすると緊張してしまう。
怖くなって、逃げた。
折角家に入れると思ったのに…。
そう思ってたのもつかの間、玄関からガチャりと音がして、弟くんが私へ走ってきた。
余計に怖くなって走ってた私…けど体力が全然なくて、近くの小さな公園でバテてしまった。
しばらくして弟くんも公園入口のポールに手をついて、ぜぇぜぇ言いながらこっちを向いている。
「…っあ、あの…みっ、みんって…なま、え…たっ、助けてって、意味、だっ…た、ので…あの…」
初めは何か全くわからなかったけど、弟くんが言うには、こう。
私が友達に呼ばれているあだ名「みん」が、どこかの国の言葉で「助けて」だったらしく、弟くんは私のことをとても心配して、1度話がしたかったそう。
私は「みん」が「助けて」なんて意味があることを知らなくて、驚いたけど、私の今と一致する「みん」に、訂正しないことにした。
私を心配してくれた、弟くんのためにも。
別れ際、私はどうしてか弟くんを抱きしめて
「気づいたの、キミが初めてだよ。…本当にありがとうね。」
って言った。久しぶりに感じた人肌と、私より少し小さな体が暖かくって、とても心地よかった。
それが私の初めて感じた「愛」だった。