「もう今更何を言ってもどうにもならないよ、拓海。蒼ちゃんの頭はもう赤くなっちゃってるし、ここにあるヘアカラーは青だけだし」

 マルオがポンと拓海の右肩に手を置いたので、

 「そういう事だよ。諦めような、拓海」

 俺は拓海の左肩に手を乗せた。そして、

 「お風呂貸すから、好きな様に染めて来なさい」

 蒼ちゃんは後ろから拓海の背中を押した。

 「お前ら全員敵か⁉」

 髪を染めたくない拓海は『風呂など借りん』と言って、その場に留まろうと足を踏ん張らせる。が、

 「仲間だから、一緒に染めようって‼」

 蒼ちゃんが拓海の背後から拓海の両脇に自分の腕を通すと、

 『せーの‼』

 マルオが拓海の右足を、俺が拓海の左足を持ち上げ、3人で拓海を風呂場へ強制連行。

 「仲間って一体…」

 染髪以外の選択肢がない事を悟った拓海が呟く。

 『仲間、最高‼』

 仲間が何かが分からなくなってしまった拓海に、蒼ちゃんとマルオと俺とで声を合わせて教えてやると、

 「そうですね‼」

 拓海がやけくそな返事をして、『フッ』と笑った。

 拓海はいつもそう。俺らにどんなに弄られても、俺らがどんなに怒らせても、最後は笑って折れてくれる。

 そんな拓海に、俺らはいつも甘えてしまう。俺ら3人は、拓海の事が大好きなんだ。