蒼ちゃんからヘアカラーを受け取り、その箱を見て拓海の表情が更に険しくなった。

 「なんで青なんだよ。みんな自分で色決めたのに、なんで俺だけ強制的に青なんだよ」

 『紫と若干色被ってるじゃん』と、拓海が蒼ちゃんにヘアカラーの箱を突き返した。

 「だって、拓海の名前【海】って字入ってるじゃん。海と言えば青じゃん」

 蒼ちゃんは手の指を隠すようにぎゅうっと握りしめ、ヘアカラーの返品を拒否する。

 「冬の日本海を見た事ないのか⁉ 恐ろしく灰色だぞ‼ つか蒼ちゃんこそ青だろ。名前にモロ入ってるじゃん。普通、主役が赤だろ。戦隊モノだって、大概真ん中にいるヤツが赤いやん」

 『なぁ⁉』と今度はマルオと俺に同意を求める拓海。

 「俺が赤好きなの知ってるだろ。赤は2人もいらないのー‼」

 蒼ちゃんの言う通り、確かに蒼ちゃんは赤が異常に好きだ。スマホのケースもタブレットのケースも赤だし、スニーカーにもリュックにも赤が入っている。更にいうと、授業のノートを赤ペンで書いたりするから、借りた時にどこが大事なのかが分からない事が多々あるくらいに、蒼ちゃんは赤好きだった。