「だって、おかしいじゃん‼ 俺、昨日大賞作品見たんだよ。どう考えても俺らの方が上だったもん‼ 脚本も、演出も‼」

 拓海はクスリともせずに、鼻息を荒げた。

 「だったら、がっくんの演技の問題かもしれないじゃん。なんで俺のせいって決めつけるんだよ」

 蒼ちゃんが拓海に鼻息を吹き返した。

 「またそうやって俺を巻き込むし」
 
 そんな蒼ちゃんの鼻の穴に指を突っ込み、鼻息の根を止める。

 「蒼ちゃんの無意味にボコボコの顔での出演は、審査員に『ふざけている』って取られても仕方ないと思う」

 拓海は、蒼ちゃんがわざと逸らそうとした話には乗らなった。

 「何それ。納得いかん。ねぇ、賞取れなかった作品、ネットで公開してもいい? コメント欄見たら、何が原因か分かるっしょ。今の時点で俺の責任にされるのは、流石に受け入れられない」

 蒼ちゃんが、自分の鼻に刺さった俺の指を引き抜くと、特大の鼻息を放ちながら動画サイトへの投稿を提案した。