二人で何だかんだ言いながら鍋を作って食べ、お風呂に入って、ベットに潜る。

 ベットの上でも会話は途切れなかった。職場でのあの険悪な空気が嘘みたいだ。

「唐沢さんってさ、絶対浮気しないタイプだよね」

「何気に誠実なんでね」

「イヤ、そうじゃなくて。告白出来ないタイプじゃん。超シャイボーイ」

「浮気なんかそんなのしなくても出来るじゃん。なんとなーく近づき、何となくヤル」

「全然誠実じゃないやん」

「まぁ、俺はしないけど」

「シャイボーイだもんね」

「オイ、コラ」

「じゃあ、言ってみ? 『好きです、夏川さん』って言ってみ?」

「俺は直接言わないタイプなだけ。古風にお手紙タイプ。夏川さんが露骨にシカトして『声掛けるな』空気を醸し出してたから、生まれて初めてファンレターなどをしたためてしまったしな。そのうち編集さんからもらえるんじゃね?」

「あ、今日受け取ってきたわ。読まなきゃ」

  身体を起こし、ベッドから出ようとする私の背中を、唐沢がグイっと引っ張った。

「『読まなきゃ』じゃねぇわ。どうせ、音読して俺を辱める魂胆だろ。分かってるんだよ、こっちは。俺が寝てから黙読しろ」

「シャイボーイめ」

「シャイボーイやめろ」

 こうしてほとんど寝ないまま、朝を迎えた。