そしてそのまま唐沢のマンションに行くことに。

 駅の改札を抜け、ふと気づく。

「唐沢さん、電車合ってます?」

「自分家に帰る電車間違えるヤツいねぇだろ」

「だって前に東京に来た時、東京駅まで送ってくれたからそっち方面なんだと思ってた。この電車、反対方面ですよね? もしかして、送ってくれたんですか? そっかー。そんなに私と一緒に居たかったのかー」

 ニヤニヤしながら唐沢を見上げると、

「方向音痴の田舎者、放置できなかっただけ‼ 家に帰るまでが遠足だからな。引率者としての責任を果たしただけ‼ こっち見んな」

 唐沢が左手の掌を私の顔の前に翳して目隠しをした。

 唐沢の指の隙間から、顔を赤くして焦る唐沢の顔が見えて、楽しくて嬉しくて笑いが止まらなくなってしまった。

 電車を降りると『簡単に鍋でも食べようか』という話になり、スーパーで材料を購入してから唐沢の部屋へ。

 男の人の部屋に行くなんて、何年ぶりだろうか。ソワソワが止まらない。

 唐沢の部屋は、割と綺麗に片付いていた。本棚にはしっかり私の本が入っていて、何だか嬉しい。

「その本、大量にあるから1冊鍋敷きにする?」

 などと言いながら、唐沢が本棚にある【蒼い青】を指差した。

「私はなんでこんな嫌なヤツと鍋を食べることになったんだろう」

 やっぱりあの告白は間違いだったのか? と目を細めて唐沢を睨むと、

「嘘嘘。ゴメンて。野菜切るの手伝って」

 唐沢が笑いながら私の頭をポンポンと撫でた。頭ポンポンて……。唐沢って頭ポンポンとかするタイプだったんかい‼ と、驚きと恥ずかしさで体温が急上昇して、暑くて暑くて仕方がない。