「……それで、気が付いたんです。『私は、唐沢さんが好きなんだな』と……」

 握りしめた拳がカタカタ震えた。寒くもないのに唇も震える。だって、自ら告白したのは学生時代ぶりだ。20年ぶりなんだから。

「…………」

 にも関わらす、唐沢は無言。ほらね、やっぱり違ったじゃん。みんなが勘違いさせるから、出す必要もなかった勇気を絞り出して、こんな目に遭っちゃったじゃん。と心の中で逆恨みをしながら、

「……すみません。今の、無かったことにしてください。聞かなかったことにしてください。仕事が気まずくなるの嫌なので、忘れてください。すみませんでした」

 居た堪れなくなって、バッグを持ち上げ席を立とうとしたとき、

「待って」

 唐沢が私の手首を掴んだ。