『仕事中に決まってるでしょ。また遭難してたらヤバイと思ってさ』

「だったら『迷いました』って正直に言いますよ」

『そっか。今日18:00には終わる予定。どうする? 前に行った【SHIRAKI】って店、覚えてる? そこで話す?』

「イヤ、さっきまでそこでランチ食べてたので、流石に再登場は気まずい」

『1回しか行ったことないあんな裏路地の店に、よくひとりで行けたね。夏川さん、方向音痴なのに』

「どうしても行きたくて。あそこの料理、めちゃめちゃ美味しかったから」

『おそるべし、食い意地』

「…………」

 久々の会話でも、やっぱり唐沢の嫌味は健在だった。

「私、明日普通に出勤なので、東京に長居出来ないんです。なので、会社近くのカフェとかでお話出来ませんか?」

『分かった。仕事終わったらすぐ行く』

 唐沢との短い会話を終え、電話を切ると、18:00まで東京散策をすることに。

 迷子にならないように、分かり易い大通りだけを練り歩き、『折角東京に来たんだから』と、さほど欲しくもない、雑貨を買ってみたりしていたら、あっと言う間に17:30になっていた。