「唐沢さんに愛されないことは、夏川さんにとっての心の傷なんだー。へぇー」

 千秋さんが『クククッ』と嬉しそうに笑った。

「違ッ‼ おばさんからかって何が楽しいんだ、もう‼」

 否定しながらも、千秋さんの言葉にドキっとした。

 蒼ちゃんや、白木さん、千秋さん、タケくんが唐沢の話ばかりするから、いつのまにか唐沢を意識していた自分に気付いてしまった。

 そこに、唐沢のボーナス全突っ込み話なんて聞かされたもんだから、さっきから心臓がきゅうってなって、締め付けられてるわけじゃないんだけど、切ないような、でも嬉しくて、説明し辛い状態になっている。

 脳内には2人の自分がいて、『唐沢のこと、好きになっちゃったんでしょ?』と問う自分と、『イヤイヤ、あの唐沢ですよ。散々嫌味を言われてきたでしょうが。浮かれるんじゃないわよ』と反論する冷静な自分が討論中。

 パスタを食べきり、ティラミス2個も食べ終わっても、脳内討論の結果は出なかった。