「愛されてる人の心の余裕かよ。貰いますけどね。文句言っておきながら、有り難く頂戴しますけどね」
 
 唇を尖らせながらも、自分のテリトリーにしっかりティラミスを確保。

「なーにを、怒ったフリしちゃってるんだか。本当は『私、唐沢さんに愛されちゃてるんじゃね⁉ ボーナス全部突っ込まれるとか、相当愛されまくってね⁉』とか思ってるくせに」

 千秋さんがニヤニヤしながら私の顔を見た。

「……思ってるよ。思っちゃってますよ。でも、本人から聞いたわけじゃないから違う可能性だってあるでしょ⁉ 千秋さんにはまだ分からないかもしれないけど、歳を取ってからついた心の傷って、修復に時間がかかるのよ。若い時みたいに瞬発力ないからさ。変な勘違いで付けずに済む傷なんか負いたくないの」

 千秋さんの視線から逃れるようにそっぽを向くと、