「……【彼】。千秋さんも白木さんも、無意識ですか? その惚気。まぁ、いいんですけど。私のただの僻みなので、別にいいんですけどね。口では『いい』って言ってますけど、腹の中では『クソが‼』って思ってますけどね。おっそいわー。ティラミス遅いわー。何分待たせるのかしら、もう‼」

 仲良しカップルにラブラブ加減を見せつけられて、羨ましくてイラっとする。

「イヤイヤイヤ、ティラミス注文したばっかじゃん。しかも、まだパスタ食べきってないし。それに、夏川さんの方がめちゃめちゃ愛されてるじゃないですか。私、彼に私の本の為にボーナス使ってもらったことないですよ。なんなら買ってもらったこともない。『献本あるんでしょ』って言われて、タダ読みで終わりです」

 千秋さんが乱暴にパスタを口に押し込んだ。