「あれ、唐沢さんですよ。あれだけじゃないですよ。唐沢さん、【蒼い青】にボーナス全部突っ込んでますよ。行きつけの美容室とか居酒屋にも『1冊でいいから』って頼んで置かせてもらって。唐沢さんは夏川さんの気持ちを無視したかもしれない。夏川さんとの約束を破って傷つけたかもしれない。それは私のせい。本当にごめんなさい。夏川さんにとっては余計なことだったかもしれない。だけど唐沢さんは、小説を書くことが好きな夏川さんが、より良い環境で執筆出来たらいいと思って、約束を破ったんですよ。夏川さんは自分の作品を恥ずかしがるけど、唐沢さんだって、私だって、白木さんもタケくんも、夏川さんの作品が大好きで、誰が見ても恥ずかしくない自信がある。だから……」

 自責の念に駆られた千秋さんが、薄ら涙を浮かべた。