「私も好きだなぁ。夏川さんのそういうところ。夏川さんの書く文章も好き。私、夏川さんが出した本、読んだんです。面白かったです。でもそれより、【あぁ、好きだな】って感想の方が強かったです」

 柔らかく微笑みながら、千秋さんも少し冷めてしまったパスタを一口食べた。

「……嬉しいです。なんか恥ずかしいな。ありがとうございます。ゴッゴホッ」

 口の中にパスタを入れ過ぎたため、上手く飲み込めずに感謝の言葉を言いながら咽てしまう。

「無理に喋らなくていいのに。そういう人柄が文章に出てて、本当に良かったんですよ、【蒼い青】」
 
 千秋さんが「お水お水」と、私の手元にお水を置いてくれた。

「唐沢さんも同じ思いだったんですよ。そろそろ夏川さんの本、出るんじゃないかなーって頃に、唐沢さんに訊いたんです。『何てタイトルの本なの?』って。でも、唐沢さんは頑なに教えてくれなかった。『すごくいい本。たくさんの人が読んでくれればいいなと思う。でも、言わない約束だから』って」

「……え?」

 千秋さんの言葉に咳が止まり、息を飲む。