「何を誰に言ったんですか?」

 3人の顔を見渡すと、

「……私が、唐沢さんに……」

 千秋さんが言いにくそうに口を開いた。

「唐沢……」

【唐沢】という名字に、右頬がヒクヒクした。

「うわー。予想を遥かに超える拒否反応じゃん、佐波野先生」

 タケくんが私の様子に驚きながら、『一口飲んで落ち着きましょうか』とグラスに水を入れて手渡してくれた。

「あの、【佐波野先生】ってやめて頂けませんか? 私の本名は、夏川です」

 タケくんに【佐波野先生】と呼ばれる度に、秘密をバラした唐沢への怒りが込み上げる。それをここにいる3人にぶつけるのはおかしな話なので、タケくんが淹れてくれた水と一緒にグッと飲み込んだ。