「……そうですか。では、先方にはその様に返答しておきますね。で、今日はもうひとつお話がありまして、佐波野先生に次回作を書いて頂けないかと……」

 私の態度に苦笑いを浮かべた編集さんが、話を変えた。

 きっと、『コイツにこれ以上言ったところで、蒼ちゃんの脚本で金を稼ぐ気はサラサラないな』と悟ってくれたのだろう。

「嬉しいです‼ 頑張ります‼」

 後ろに下がった分、椅子を前に戻し、前のめり気味で次回作の話に食いつく。テーブルの下では拳を作って小さくガッツポーズ。

 それからは蒼ちゃんの話を一切せず、次回作はどんな話にするか、いつまでを目処にプロットを書くかなど話し合ったり、編集部に届いた、人生初の自分宛のファンレターを受け取って興奮したりして、お昼を過ぎた頃に出版社を後にした。