出版社に行くのは2回目だった為、今回は割とすんなり辿り着けた。まぁ、ちょっとは迷ったけれど。

 久々に会う担当編集さんに笑顔で挨拶をすると、何故か少し険しい顔をされ、奥の部屋へと案内された。

 編集さんの表情に不安を感じながら、通された部屋に入り椅子に座ると、

「佐波野先生、岳海蒼丸の蒼汰さんとお知り合いだったんですか? 先方の事務所から、佐波野先生の名前で蒼汰さんが書いたという脚本が送られてきたと連絡がありました」

 一刻も早く確認したかったのか、編集さんは世間話を挟むことなく本題を口にした。

「あ、はい。私、過去に何度か小説をコンクールに応募していて、それを彼が読んでくれていまして……。少し交流がありまして、彼が生前に書いた脚本のデータを、私が持っていたもので……」

 本当は死後に書いたものだけど。と自分の嘘に心の中でツッコミむ。でも、あれは間違いなく、蒼ちゃんの脚本だ。