私が獲った賞は、結構有名なコンテストだった為、出版した小説はそこそこ売れ、【佐波野ミソノ】の名前は、読書好きの人たちには薄ら知られる存在になっていた。

 今がチャンスだと思った。

 名もない私が蒼ちゃんの脚本を岳海蒼丸に送ったところで、詐欺やいたずらにしか見えないだろう。でも、名前が少しでも出ている今なら、これが蒼ちゃんのものだと信じてもらえる可能性が高い。

【佐波野ミソノ】を名乗り、蒼ちゃんの脚本を岳海蒼丸宛てに送った1週間後、出版社から『訊きたいことがある』と連絡が入り、東京へ行くこととなった。

 重版かかったし、次回作の打診かな? と、少し意気揚々としながら、有休を取っていざ東京へ。