「蒼ちゃんみたいな実力と実績があれば、私だって拡声器を小脇に抱えて大声出してるよ。だけど私はそうじゃない」

 才能の塊だった蒼ちゃんの顔を見れずに、なんとなく俯く。

「実力がなきゃ本なんか出せないっつーの。何でそんなに自信ないかな、サバちゃんは。あ、やっぱり周りに秘密にしてるから悪いんだよ。だって俺、中学の時に書いたシナリオ、がっくんと拓海とマルオに見せて、3人があまりにも褒めてくれるから嬉しくなって調子に乗って、たくさん書くようになって自信がついたタイプだもん」

 蒼ちゃんが懐かしそうに『そうだったそうだった』と遠い日の思い出に目を細めた。

 岳海蒼丸のファンだから、4人の話を聞けるのは嬉しい。でも、やっぱり胸がきゅうっとなる。

 戻してあげたい。蒼ちゃんを、3人の元へ戻してあげたい。