「別に進展なんかしてないし。一緒にゴハン食べただけだし」

 ひとりで勝手に盛り上がる蒼ちゃんに冷めた視線を送ると、

「これからこれから♪」

 蒼ちゃんが『ここからガンガン行くよ‼』と天に拳を突き上げた。

 東京での話をして変に蒼ちゃんに期待を持たせてしまったことを後悔した。ガンガンどこへ行けって言うんだろう。

 そんな蒼ちゃんの期待にはやっぱり応えられず、仕事の合間に蒼ちゃんの脚本を手伝ったり、帰宅してからは本の刊行に向けて小説を改稿したりで、唐沢とは何もないまま半年が過ぎた。まぁ、当然だ。ただ、以前よりは唐沢と話をし易くなった気はするけれど。そして、

「遂にサバちゃんの本、発売かぁ。おめでとう‼ 買いたかったなぁ。購入者、第一号になりたかった」

 本の発売日が決まり、蒼ちゃんが『良く頑張ったね、サバちゃん』と自分のことの様に喜んでくれた。