「さすが小説家。言葉巧みにかわしますね。本出る時ちゃんと教えてね。じゃないと俺、口軽いからすぐ喋るよ」

 しかし、唐沢は見逃してくれなかった。

「口軽いのは知ってる。白木さんたちに速攻でバラしたもんね。でも、唐沢さんって人間関係狭いんでしょ? だったら別にそこまで広がらなそうだから……」

 唐沢に拡散能力などないと気付いた、こちらもこちらで断固拒否。

「夏川さん、千秋さんのSNSフォロワー数知らないの? PN言わないと実名で拡散してもらうことになるよ」

 唐沢がニヤリと笑いながら私の顔を見た。

 そうだった。限られた人間関係であっても、その中に爆発的なカリスマがいると大変なことになることを忘れていた。

「言う‼ 言うから、本当に誰にも言わないで‼ 友達にも家族にも会社の人にも‼」

 唐沢の二の腕を掴んで念を押す。

「はいはい。約束ね」

「秘密ね‼ 約束と秘密は絶対‼」

 掴んでいた唐沢の腕を揺らしながら言い聞かせると、

「分かった分かった。約束と秘密は絶対」

 唐沢が『ククク』と笑った。本当にコイツはちゃんと分かっているのだろうか。