見栄を張っても仕方がないのに、ウンコだと思われたくなくて、さっとトイレを済ませると、ホールにいたタケくんに向かって手を上げながら、レジに呼んだ。36歳はそう、自ら近寄って行かず、相手を自分の方へ呼ぶスタイル。だって、どうせレジに戻るんだし、やっぱり二度手間だもん。

「どうしました? トイレットペーパーなくなっちゃいました?」

 足早に私のところに来てくれたタケくん。

「イヤ。お会計をお願いしたくて。テーブル会計だと、ちょっと生々しいかなと。後半、値段も見ずにオーダーしてたから、結構な金額になってるでしょ?」

 財布からクレカを引き抜き『でも、高くても全然良い。めっちゃ美味しかったし。最高でした。ごちそうさまでした。あ、1回で』と言いながらタケくんに差し出すと、

「お会計、さっき唐沢さんが済ませましたよ」

 タケくんが掌をこちらに向けて、クレカの受け取りを拒否した。