「本人です。嬉しいな。私のことを知っていてくれてるなんて。あ、本名ではないんですけど、みんな私のこと【千秋】って呼ぶので、最近自分的にもこっちの方が本名よりしっくりくるんですよね」

 千秋さんがにっこりと笑った。

「この人も作家だよ。小説家」

 私を指差しながら、唐沢が余計なひと言を挟む。

『えぇー‼』

 白木さんと千秋さんが声を揃えて驚きながら私を見た。

「えぇー⁉」

 私は目を見開きながら唐沢を見上げる。

 誰にも言わないでくれってお願いしたのに、サラっと裏切られた。

「え? こいつらにも言っちゃダメだったん? 会社のヤツに黙ってればいいのかと思ってたわ」

 唐沢が『解釈違ってたか』と首を傾げた。

 どんな解釈をするとこうなるのだろう。【誰にも】は【何人たりとも】という意味以外ない。