「もっと歳とって、食が細くなったら、どうやって生きてくの? 夏川さん」

 唐沢が、私のテンションを一気に下げる恐ろしい質問を投げかける。

「え。こわい。ひとりぼっちで寝れない食べれないって、何を楽しみに生きればいいの? 無駄使いしないでお金貯めて老人ホームに入ろう。食べられる量が減ったって、美味しいものが食べれたらそれで幸せなはず。うん、そう。きっと、そう。絶対、そう‼」

 胸に手を当て『平気、平気。私は独りでも生きて行ける。心配ない』と自分に言い聞かせる。

「大丈夫だよ。夏川さんには小説があるじゃん」

 唐沢が私の肩をポンポンと叩いた。

「それ、誰にも言わないでくださいね。本当にお願いしますね」

【小説】というワードをサラっと口にする唐沢が、恐怖でしかない。

「分かっってるっつーの。しつこいな」

 唐沢に思いっきり煙たそうな顔をされたので、もうこれ以上は言わないことにした。