僕等の、赤。

「今呼んできますよ。今日、そんなに忙しくないんで」

 タケくんが唐沢の視線の先のキッチンに向かって歩いて行った。

 タケくんが唐沢の友達を呼びに行っている間、店内を見回す。

「凄く雰囲気の良いお店ですね。料理、楽しみだなぁ」

 畏まった感じではないカジュアルさに、居心地の良さを感じていると、

「料理よりも酒だろ。夏川さんは」

 と唐沢が笑った。

「お酒飲むとあんまり食べなくなる人っているじゃないですか。私、お酒飲んでてもめっちゃ食べるんですよ。だから、料理もめちゃめちゃ楽しみです。私、36で独身じゃないですか。人間3大欲の性欲は、もう諦めたわけですよ。期待もしてなくて。で、睡眠欲は、若い時は平気で10時間とか寝てられたのに、今となっては8時間も寝ていられないんです。勝手に起きちゃう。となると、もう食欲に走るしかなくって」

 苦笑いをしながらも、キッチンから流れてくるいい匂いに『食欲を刺激してくる匂いだなー。コレ、何の料理の匂いだろう。早く食べたいなー』とテンションが上がる。