僕等の、赤。

「あ、ごめん。早く水飲みたいかと思って」

 唐沢が歩くのを辞め、コンビニを指差した。

「……え⁉ あ、あぁ大丈夫ですよ。どっちかというと早くお店に行ってビールを……」

 思いもよらない唐沢の気遣いにビックリして、うっかりポロっと本音が口をついた。

「さすがだね。勇ましいわ。全然かわいい子ぶらんのな。そうだよね、ビールで祝杯あげたいわな」

 唐沢が『ククク』と肩を揺らせて笑った。

「36のぶりっ子、見たいですか? したらしたで、どうせ『痛いな、ぶりっ子ババア』って言うでしょ。いいんです。私はもう、男性の目なんかどうでもいいんです。残りの人生を考えて、身体が健康なうちに飲みたいものを飲むんです。この先、体調を崩してお酒を控えなきゃいけないことになる可能性だってあるわけだけら、今、大量摂取しておくんです。ていうか、祝杯じゃないですよ。自腹の祝杯なんか聞いたことないです」

 お店に入る前にお酒ガブ飲み宣言。確かに私は酒好きだ。でも、大酒飲みではない。が、今日は飲まないと唐沢と食事なんかしていられない。頼っておいてこんなことを言うのも何だが、やっぱり唐沢が苦手なのだ。