僕等の、赤。

「ありがとうございます。……大丈夫ですか⁉」

 膝に手を置き、中腰で地面に向かって咳き込むババアの背中を、優しく摩ってくれるスーツの若者。

「大……丈夫でっす……。お急ぎで……しょうから、私のことなどか、ま、わ、ず……行ってくだ……さい」

 若者の優しさに、『頑張って走った甲斐があった』と心はほっこりしているのに、息絶え絶えに笑顔さえつくれない36歳。

「イヤイヤイヤイヤイヤ‼ ちょっと待っててください。そこのコンビニで水買ってきますから‼」

 優しい若者がコンビニへ走ろうとした時、

「ねぇ、何してんの?」

 頭上で声がした。

 ゆっくり顔を上げると、細い目を作りながら私を見下ろす唐沢がいた。