僕等の、赤。

「こっち」

 と言って、スタスタと前を歩き出した唐沢。もちろん、私の歩調に合わせようともしてくれない。

 チンタラ歩いて『足の短いババアだな』などと言われたくない為、小走りで唐沢の後を追うと、反対方向から歩いて来た新卒風のスーツの男の子が、すれ違いざまにスマホを落としたのが見えた。

 が、全く気付かず歩いて行ってしまう若者。

 しゃがみ込んで彼が落としたスマホを拾う。

「ちょっと待って‼」

 スマホの持ち主に私の声は届かず、彼は足を止めることなくどんどん歩いて行ってしまう。

 前を向けば、足を止めた私に気付いていない唐沢も、あっと言う間に遠くの方へ。

 待ってくれ‼ どっちもちょっと待ってくれ‼ と焦りながらも、『スマホを無くしたら仕事に影響出るだろう』という親切心から、走ってスマホの持ち主を追うことに。