僕等の、赤。

「なんか意外。蒼ちゃんって、女の扱い上手そうなのに」

「それは拓海」

「あぁ、そっか」

「あっさり納得されてるし。さすが拓海。ウケる」

 しかし、岳海蒼丸の話になると、蒼ちゃんは本当にいい顔で笑う。

 どんなに大好きだったのか、どれほど大事にしていたのかが痛いほど伝わって、蒼ちゃんの笑顔に胸が苦しくなる。

「蒼ちゃんにはここでしか会えないんだよね? 早速脚本書こう。早く岳海蒼丸に届けよう。社員がいない時間にしか出来ないんだから」

 唐沢が見ていたスケジューラーをwordに切り替える。

「ありがとうね。でもサバちゃんはその前に、授賞式で話すスピーチ考えた方が良くない?」

 蒼ちゃんが何も打ち込まれていないword画面を覗きこみながら、『一緒に考えよう』と頭を働かせ始めた。