僕等の、赤。

「諦めないねぇ、蒼ちゃん。そんなにアイツの子どもになりたいの?」

 ティッシュを丸めて『物好きだよね、蒼ちゃんって。Mなの?』と蒼ちゃんの方を見ながらゴミ箱に投げ入れた。

 この事務所に通って14年。ゴミなどノールックで入れられるようになっている。

「諦めないよ。俺、ふたりの子どもになるためにここにいるんだし。それに唐沢と俺、なんか似てるから、唐沢の気持ちが分かっちゃうんだよね」

 蒼ちゃんが私が投げ捨てたティッシュを見て『何その特技』と笑った。

「全然似てないじゃん。蒼ちゃん優しいじゃん。いいヤツじゃん。全く違うよ。勘弁してよ」

 真顔で蒼ちゃんの言葉を全否定。

「何を勘弁するんだよ。俺もね、唐沢と一緒で意識してる相手だと、どうにもこうにも二進も三進もいかなくなるの。余計なこと言ったりしちゃったり。どうしたらいいのか分からないから、気心知れた岳海蒼丸のメンバーとばっかりつるんでいるうちにフラれる。みたいな」

 昔の恋でも思い出したのか、蒼ちゃんが苦い表情を浮かべた。