僕等の、赤。

「所長、夕方まで戻りませんが、ここで待ちますか? お茶、淹れましょうか?」

 自分の気持ちと目をクールダウンさせたくて、逃げ場へ駆け込む口実を作る。

「いい。ちょっと現場見に行きたいから」

 唐沢もこの空気に居心地の悪さを感じたのだろう。事務所を出て行った。

「……ふぅ」

 事務所のドアが閉まると同時に安堵が混ざった溜息が出た。

「サバちゃんの目、真っ赤。泣いちゃえばいいのに。その方が相手を『お前が悪い』って責められるじゃん。我慢するから『この程度は大丈夫なんだな』って勘違いされちゃうんだよ。サバちゃんってさ、唐沢に興味持ったことないでしょ」

 蒼ちゃんが右手をひらひらと動かして、私の目を仰ぐ仕草をした。『全然風こないよ』っと笑うと、『知ってる』と蒼ちゃんも笑った。